泥棒失格

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 赤ん坊なんてどうしていいかわからない。右往左往しながらも抱き上げるとオムツがやけに重く感じた。  おいおいオシッコがたまってるじゃないか。  赤ん坊は男の子だった。俺は生まれて初めてオムツを変えた。それから台所に置いてあるミルク缶の説明を読み、哺乳瓶を煮沸し、ミルクをつくって飲ませた。  まるで母親になった気分だ。本当の母親がいったいどこに行ったのか、昼間に見た雰囲気からして男のところではないかと勘繰った。  お腹がふとった赤ん坊はやがて寝息を立てた。俺は赤ん坊を布団におろすと玄関の外に出て、母親の帰りを待った。  母親は朝陽が昇り、通勤や通学をする人の賑わいが戻ったころ、ようやく帰ってきた。徹夜で遊んでいたのだろうか。化粧が落ち、くたびれたようにして戻って来た。  俺は何も言わずその場から立ち去った。
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