泥棒失格

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 それから俺は毎晩あのアパートに行った。  その後、調査してみると、母親はシングルマザーで、夜になると男友達と遊び歩いていることがわかった。だから俺は夜になると母親の代わりに赤ん坊の世話をした。  実際のところ俺には親がいない。幼いころ捨てられ、施設で暮らしてきた。そんな俺にとって、親に捨てられた子を放っておくことはできなかった。  ちゅぱちゅぱとおいしそうに音を立ててミルクを吸う赤ん坊を見ているとなぜだか胸の奥が熱くなった。施設にいたころ俺にミルクを与えてくれた職員のことを想った。 「なんだよ、そんなにうめえのか。おい、幸せになれよ」  そう願わずにはいられない。
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