死という数字

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やがて私は地下鉄の駅に着く。 改札を通り抜け電車に乗る。もちろん前から四両目の車両には乗らない。いつも先頭車両に乗るようにしている。 車、バスと違い電車なら安心だ。事故が起きる可能性は低い。 私は席に座ると鞄の中から小説を取り出す。だいたい自宅の最寄り駅まで十五分ほどかかるので、その間、小説を読むことが多い。 電車が走り始めて十分ほど経ったころだろうか。いきなり近くで怒声が響いた。 「てめえ、殺すぞ、この野郎!」 見ると二人の男、中年のサラリーマンと二十歳前後の金髪の若者が胸ぐらを掴み合い、言い争っていた。はっきり分からないが肘が当たったとか当たってないとか叫んでいた。 最悪だ。喧嘩の巻き添えを喰らうかも知れない。 やはりだ。知らぬうちに四という数字に関わったから、災難が私に降りかかろうとしているのだ。 他の乗客たちはみな見て見ぬふりだ。それはそうだ喧嘩の仲裁になんか入ったら、とばっちりで殴られるだろう。 私も夢中で小説を読んでいるふりをする。しかし、内容は全く頭に入ってこない。 びくびくしながら耐えているうちに、ようやく電車が私の降りる駅に着いた。喧嘩はまだ続いている。喧嘩というか、もはや中年のサラリーマンがボコボコに殴られ、リンチに近い感じだった。 ドアが開くと私は急いで駅のホームに降りた。これでひと安心だ。とりあえずは。
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