死という数字

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私は走った。災難から、運命から、呪いから逃れるように。こんなに走ったのは学生の時以来だ。 息が苦しくなる。足もだるくなってきた。それでも構わず走り続ける。 必死に走り続け、ようやくアパートにたどり着いた。鍵を開け部屋の中に入る。 冷蔵庫からお茶を取り出し、一息に飲む。そして、ソファーに座り、ゆっくりと息をととのえる。 これでとりあえずは安心できる。あとは食事をして眠るだけなのだから。それにしても分からずじまいだった。四という数字にいつ関わっ。 私はそこである異変に気付いた。 ベッドの横に目覚まし時計が置いてあるのだが、時間がおかしい。まだ身に付けている腕時計を見ると午後六時を少し回っていたが、目覚まし時計のほうは。 その目覚まし時計は電池で動くタイプだったので、途中で電池が切れて止まってしまったのだろう。 しかし、よりによって、そんな時間で止まるとは。嫌な胸騒ぎの原因はこの目覚まし時計だったのだ。 そう目覚まし時計は十四時四十四分で止まっていたのだ。 四という数字がたくさん並んでいる。見るからに不吉だった。 私はさっそく机の引き出しから新しい電池を取り出し、古くなった目覚まし時計の電池と入れ換えた。そして正しい現在の時刻に合わす。 これで安心だ。 それにしても、こんな形で四という数字に関わっていたとは。どうりで思い当たる記憶がないはずだ。これからは電池式の目覚まし時計をやめて、コンセントから電源をとるタイプにしたほうがいいだろう。 さて、とりあえず先に風呂でも入ろうかと私が立ち上がった時だった。 あろうことか、目覚まし時計が、時間が、逆に進んでいる、しかも、猛烈なスピードで。 そして、十四時四十四分で、止まった。 部屋の明かりが突然、消えた。 暗闇の中で何者かの気配を感じる。 私は身動きひとつすることも出来ず、心の中でこう思った。 手遅れだったのか。 ーおわりー
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