死という数字

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同僚たちはデスクに向かい、一生懸命に仕事をしている。あと一時間ほどすれば勤務時間は終了だ。 いつもと変わらない風景。特に誰かが仕事上のトラブルを起こした訳でもない。 なのに妙な胸騒ぎを覚える。 午前中はそうでもなかった。いつも通り快適に仕事をこなしていた。しかし、昼食を食べたあと、ややあって妙な胸騒ぎを覚え始めたのだ。 もちろん理由は分かっている。 きっと、あれだ。 間違いない。 人は誰しもという訳ではないが、げんかつぎをする人も多いだろう。何か大事なことがある日は朝からカレーを食べることにしている、とか、白い洋服を着ていく、とか、普段持ち歩かない御守りを身に付ける、など。 それは学校の試験であったり、会社の面接であったり、デートをする日だったり。人によって様々だろうが、どうしても、げんかつぎをしなければ気が済まないのである。 その理由はたまたま良いことがあった時に、朝はこれを食べたから、こういう服を着ていたから運気が上昇したのだと思いこんでいるだけなのだが、やはり、それが二度、三度と続くとただの偶然とは思わなくなるのである。そこから人はげんかつぎをするようになるのだ。
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