0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
開店時間5分前にセットした時計が鳴った。
8時55分。間に合う。無機質な玄関扉を蹴り開けて、階段の手すりにケツを半分乗せて滑り降りた。四十半ばの中年男がやる真似ではないがそれがルーティンだ。
後は自転車に乗って波いるライバル勢を追い抜き、目当ての品を頂くだけ。
引っ越してから早3ヶ月。打ち合わせの為に都心へ出向く日を除いて、カスタードたまごぷりんを食べ逃した事はない。
この日までは。
「……チャリがない?!」
動揺が走った。いつも階段の裏に置いてあるはずの自転車が無い。
置き忘れたか? いや、昨日も自転車に乗って買い出しに出掛けて、確かにいつもの所、ここに停めた。
「何で無いんだ!?」頭を抱えた。叫んでいるうちにも時間は過ぎて行く。
「行かなきゃ!」プライオリティはカスタードたまごぷりんだ。駆け足で店までの一本道を走った。
最初のコメントを投稿しよう!