1

2/3

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
開店時間5分前にセットした時計が鳴った。 8時55分。間に合う。無機質な玄関扉を蹴り開けて、階段の手すりにケツを半分乗せて滑り降りた。四十半ばの中年男がやる真似ではないがそれがルーティンだ。 後は自転車に乗って波いるライバル勢を追い抜き、目当ての品を頂くだけ。 引っ越してから早3ヶ月。打ち合わせの為に都心へ出向く日を除いて、カスタードたまごぷりんを食べ逃した事はない。 この日までは。 「……チャリがない?!」 動揺が走った。いつも階段の裏に置いてあるはずの自転車が無い。 置き忘れたか? いや、昨日も自転車に乗って買い出しに出掛けて、確かにいつもの所、ここに停めた。 「何で無いんだ!?」頭を抱えた。叫んでいるうちにも時間は過ぎて行く。 「行かなきゃ!」プライオリティはカスタードたまごぷりんだ。駆け足で店までの一本道を走った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加