3915人が本棚に入れています
本棚に追加
♯1
あなたには推しがいますか。
現代女子の多くが推しを持ち、推し活動に励んでいる昨今。
デジタル大辞泉(小学館)によると「推し」とは『他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物』とのことだ。
その使われ方の幅は広いが、推しのアイドル、推しの俳優、推しのアニメキャラなどに用いられることが多い。
私、高岸由美にも、崇めてやまない、目の保養であり心の栄養でもある推しがいる。
そんな私の推しとはーーーー。
ガヤガヤガヤ。
休日の居酒屋は人の声で常にざわめき、とても賑わっている。
今日の私は、大学時代のテニスサークルの仲間が集まった飲み会に参加していている。
ちょっとオシャレな居酒屋の広めの個室に、今回は結構な人数が集まり、15名近くがお酒を片手に語らい合っている最中だ。
大学を卒業してからもう3年以上が経ち、今では私も立派に社会人4年目だ。
「由美は最近仕事はどう?」
隣に座る友達の利々香が話しかけてきた。
利々香はサークルの中でも当時から仲が良く、社会人になった今でもよく遊ぶ友達だ。
ミーハーでトレンドを逃さない今どきの女の子である利々香は、自分の得意を活かして、アパレルショップで働いている。
普段平日休みなのだが、今日はたまたま日曜休みとなり、今日参加できているのだ。
「忙しいけど楽しいし充実してるよー!」
私は笑顔で利々香の質問に答える。
実際、忙しいのは忙しいけど、私には推しがいるから「なんのその!」って感じなのだ。
「あんな誰もが知る大手の会社で働いてるなんて、由美はすごいよねぇ。この前も新商品発売のニュースをSNSで見かけたよ」
「わぁ〜本当に!?それ嬉しいーー!まさにそれ私の仕事なんだよね」
「由美の仕事?」
「そうだよー。私、広報だからね」
私は大手食品メーカーの「大塚フードウェイ」という会社で働いている。
あらゆる食品を取り扱う国内では大手の会社で、創業100年を超える老舗だ。
創業者一族が代々経営していて、老舗なのに若手にもどんどん仕事を任せてくれる風土のある会社で、私は新卒で入社してからずっと広報部に所属している。
プレスリリースの発信や取材などのマスコミ対応、社内報の発行などを担当する広報部だが、最近はSNSにも力を入れていて、SNS発信は若手の私に任せてくれることが多い。
こうして友達に自分の発信したものが見られていると分かると、自分の仕事の成果が感じられて嬉しいものだ。
最初のコメントを投稿しよう!