♯1

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「ね!ね!ていうか、マジな話、2人とも推しの話ばかりじゃなくて、彼氏作ろうよ。私たちもう20代も半ばだよ?私もこの前もう26歳になっちゃったし、アラサーに片足突っ込んだから焦ってるの!」 百合さんに想いを馳せていると、利々香の声で現実に引き戻された。 利々香は1年くらい前に彼氏と別れて今はフリーだ。 初恋すらしたことがなく、当然彼氏がいたこともない私だが、友達もいるし仕事も充実してるしで、焦る気持ちはあまり分からなかった。 「とりあえず今度合コンしよ!私ツテがあるから、由美と千賀子は参加してね。私のためだと思ってお願いねー!」 「いるだけになるけど」 「それでもいい!」 まぁ参加するだけならいいかと了承する。 男女共に友達が多い私は、そういう場は特に苦ではなく、行けばそれなりに会話して盛り上がれるのだ。 「由美は本気で彼氏作る気になればできると思うけどな〜。可愛い方だし、もっと服装とかにもこだわれば絶対ばけるのに!」 アパレル店員らしいことを利々香が言い出す。 卵型の顔に、二重のぱっちりした目の私は、決して整った顔ではないが、愛嬌のある顔だとよく言われる。 最低限のメイクで、髪も肩につかないくらいの茶髪のボブという若々しい感じなので、たまに大学生に間違われることもある。 服装は、可愛さより機能性重視で選んでいる感じだ。 「由美は推しにお金使うことはないんだし、利々香の言うとおり、服装とか気を遣ってみれば?」 コンサート遠征でお金を推しに使いまくっている千賀子だが、推しにもしも会った時のためにと服装には気を配っているらしい。 「私だって、推しに不快に思われず、仕事ぶりを認めてもらうために、その一環として最低限の身だしなみは整えているんだけどなぁ〜」 「やっぱり推しが異性じゃないと可愛く思われたいって気持ちは湧いてこないのね」 「もしもそんなことがあれば、利々香に相談するから!その時はよろしくねー!」 なんとなく、呆れられながらのダメ出しが入りそうな空気を察知して、私は会話を切り上げた。 そのあとは、利々香や千賀子と離れた席へも移動したりしながら、懐かしいサークルの仲間たちとお酒を飲み交わす。 私が推しの話をするたびに、最初はみんな興味を持ってくれているのに、会社の同性の先輩だと言うたびに、ちょっと呆れた顔で変わった子扱いをされてしまった。 百合さんの写真を見せた男子とは盛り上がったけど、必ず「紹介して!」と最後に懇願されることになり、それを断るのが面倒でなんだか話しづらくなった。 なかなか純粋に私の推しの話を楽しんでくれる相手はいないらしいと悟った飲み会だったーー。
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