♯2

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「お相手はどんな方なんですか!?いつもなかなか教えてくださらなかったけど、聞いちゃっていいですか!?」 結婚までしたのなら教えてくれるのではと期待を込めて百合さんを見つめる。 すると百合さんは頬を少し赤く染めて恥ずかしそうにしながら話してくれた。 「いつも誤魔化してばっかりでごめんね。相手がね、大塚亮祐さんなの。だから言えなくて、結婚するまでは秘密にしてたの」 「えええー!亮祐常務なんですかーー!!」 大塚亮祐(おおつかりょうすけ)は、我が社の創業者一族である御曹司だ。 ちょうど昨年の今頃にアメリカから日本に帰国し、常務の地位に就任して海外事業を統括している。 亮祐常務は社内でも有名人なのだが、彼がそうなのは仕事ができることや地位だけでなく、その容姿がずば抜けているからだ。 その容姿の端麗さから、常務に就任した時から今現在までも女性社員には大人気で、ハンターのごとく彼を狙っている。 (さすが百合さん!まさか亮祐常務をゲットしてたなんて!!) それにしても、これまで仕事の関係で何度も2人が話している場面に居合わせたことがあるが、百合さんと亮祐常務にそんな雰囲気は全くなかった。 「経済界で注目のイケメン特集」という女性誌の特集で亮祐常務がインタビューされることになった時に、百合さんと一緒に立ち合ったことを思い出す。 あの時も、女性誌の担当ライターさんが亮祐常務にデレデレだったけど、百合さんは特に動揺することなくいつも通りだったような。 そういえばあの時、ライターさんに個人の連絡先を書いた名刺を無理やりポケットに突っ込まれた亮祐常務が、なぜかわざわざ私たちの目の前で名刺を取り出して私に「捨てといて」と渡してきたなぁ。 もしかしてあれは百合さんに浮気を疑われないようにしてたのか?と、不思議に思った行動が今になって腑に落ちた。 あぁ、それに百合さんがますますキレイになったのもここ1年くらい、つまり亮祐常務が常務に就任したあたりくらいからだ。 (うっわぁ〜!思い返せば色々繋がってくるかも!なんせ私は推しである百合さんをずっとウォッチしてきたのだから!!) 実は百合さんと亮祐常務の組み合わせは、私の中でお似合いだったので勝手に推していた。 なので、この結婚は驚きだったけど、すごくしっくり来て嬉しいものだった。
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