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「キンダイチはどうしたの?」
「ロボットを追い回してたよ。片っ端からやっつけるってな」
「どうして分かれたんだよ!」
と、吾郎は一瞬口ごもった。
「……お前を迎えに行こうと思ってな」
「ほんとにぃ?」
訝しげな旭の表情に、吾郎は目を細める。
「なんでこの期に及んで嘘をつくと思うんだ!」
「吾郎さん、嘘ついてると口が尖る癖があるんだ」
「え」
吾郎は思わず口元に手をやる。
「いや、それは……」
「嘘だけどね」
吾郎はぎょっとして、旭の方を振り返った。
「貴様! 大人をおちょくりおって!」
「やっぱり、僕を助けに来たのは嘘だったんだ?」
「……たまたま見つけたからだ。あそこで助けないと、後でキンダイチやお前に何を言われるか分からんからな」
「吾郎さん、こういう時の逃げ足ピカイチだもんねえ」
これには吾郎も、ぐうの音も出ない様子だった。何か言い返そうとむきになっているようだが、口を開かない。
「どうしたの?」旭が茶化すように言い、吾郎の顔を覗き込む。「もしかして、口、気にしてるのぉ?」
彼はくすくすと笑った後に言った。
「大丈夫だよ、吾郎さんが嘘ついてる時の癖なんてないから」
「本当か?」
「大体、そんな癖知らなくたって、吾郎さんが嘘ついてる時は分かるよ」
「言わせておけば……」
「ほら、」
旭が指差すと、吾郎は慌てて口を閉じた。
「口が尖るのは、吾郎さんが喋る時の癖だって、キンダイチや万吉先生が言ってたけど、本当だね」
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