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「もう……もう良いだろ……」
震える旭を前に、右藤はにんまりと微笑んで、何も言わない。
「優輝くんは、スケープゴートをおびき出すための人質だったんだろ」
「そうだよ」
「だったら、もう解放してよ……」
「そうだね」
と、右藤は淡々と言って、優輝を突き飛ばした。優輝はその勢いのままに、よろめいた身体を地面に叩きつけた。
旭が駆け寄っても、優輝はぴくりとも動かない。
「右藤!」
「何?」
「これ外せよ!」
「そうだったね」
と、右藤はゆっくりと、ポケットからリモコンを取り出す。勿体ぶるように指でボタンを撫でまわしてから、漸くスイッチを押すと、がちゃんと音を立てて、首輪は遂に優輝の首から剥がれ落ちた。
彼の名前を呼んであげようとした旭の声は、けたたましいブザーによって掻き消された。外れた首輪が大きく震えている。
「わー大変だあ」
わざとらしい右藤の声に、旭はぎょっとして顔を上げる。
「そいつは、三十秒装着されていない時間が続くと、勝手に爆発しちゃうんだ。幽霊もきっとただじゃ済まないだろうなあ」
思わず、旭は首輪に手を伸ばしていた。両手で持っても、彼には重いほどだった。なんとかそれを抱えて、自分の首元に近付けた。
「やめろ、旭!」
吾郎の怒号が響く。
「はったりだ……!」
「え?」
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