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引き金が引かれたと同時に、一は足元に倒れていた優輝に手を伸ばした。そのまま優輝を抱き上げ、右藤に背を向ける。
「え……?」
一の背中は、逃げることなくお札を受けた。優輝を抱いたまま、ぴくりとも動かない。
「キンダイチ先生……?」
一は、優輝をそっと下ろすと、ゆっくりと立ち上がり、右藤を振り返った。
ひらり、と一の背中から、お札が剥がれ落ちた。
「どういうことだ……」
雲に隠れていた月が、ゆっくりとその顔を出し、廊下をしっとりと照らし出す。
その時、優輝は一の足元を見つめていた。真っ白な月明かりが、廊下に伸びる一の影を浮かび上がらせていた。
次の瞬間、右藤は後頭部に衝撃を受け、うつ伏せに倒れ込んだ。傍に転がっているのは、警備ロボットの頭だった。
「右藤さん、ここまでですよ」
尻餅をついた旭は、廊下の先に佇む、大好きな影に顔を綻ばせた。
「なんで、キンダイチが、二人……?」
きょろきょろする右藤の心を言葉にするように、吾郎も困惑して呟く。
「ということは……」
優輝の見上げていた一は、その華奢な指で、自分の顎を掴んだ。不自然に伸びた皮膚を捲り上げ、勢いよく腕を振り上げる。
一のマスクの下から現れたのは、歯並びに悪い口元を、悪戯っぽく歪ませた顔――
「お姉ちゃんっ!」
飛びついてきた優輝を、快は力強く抱きしめた。
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