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「前の会社の社員も、そう罵って殺したのですか?」
「……何」
思わぬ返答に、専務の目に狼狽が見えた。社員は動じることなく続ける。
「流石は管理職。都合の悪いことは揉み消せるのですね。私も早くそこまで上り詰めたいものです」
「何の話をしているんだ!」
「運送社員の変死」
「っ!?」
「ニュースでは自殺と断定されていましたが、あれはあなた方が手を掛けたんでしょう?」
「何を……何を根拠に……」
専務に先程までの勢いはもうなくなっていた。その様子に、社員は嬉しそうに口元から舌を覗かせる。
――さあ、ここからがショータイム。
「ご本人から聞いたんです」
「はあ……?」
専務のだらしのない戸惑いの声に、社員は笑いだしそうになった。
「何を言って……か、仮に、仮に私が手に掛けたとして、それを警察に伝えるのか? 証拠もなしに?」
「証拠ぉ?」遂に社員はけたけたと笑い始めた。「そんなもの要らないんですよ、もう」
ポケットから取り出したスマートフォンの画面を、専務に突き付ける。彼の蛙のような目は、忽ち見開かれた。
「バラバラになった当時の管理職突っついたら、みーんな埃が出るわ出るわ」
社員の取り出したスマートフォンには、数えきれないほどのコメントが流れ続けていた。それが倉持運送の社員変死事件に関するものだということは、最早言うまでもないだろう。
『当時の管理職の名前一覧:首謀者は4名』
『社員に無理やり遺書書かせたってやばくね?』
『住所特定した』
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