追憶の君

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 二十三時を回っても夏希が姿を現さない。流石におかしい。僕の頭に嫌な予感が過ぎる。  まさか夏希に何か……  僕は悪いイメージを払拭する為に、その場で首をブンブン振っていた。  その時だった。  抜け道の方から人の足音が聞こえてくる。僕は安堵した。何だ、ちょっと遅刻しただけか、と思い、そちらに視線を向けると、足音の正体は夏希ではなく中年の男性だった。こんな時間に中年男性がわざわざ月を見に来るか、と疑問に思っていると、その男性は僕に向かって声を掛けてきた。 「君が夏樹くんか?」  誰だこの人は? 何故、僕の名前を知っている?  頭の中で色々と考えていると、男性が言葉を続ける。 「夏希の父です。夏樹くん、ちょっと付いて来てくれないか?」  その瞬間、夏希の身に何かあった事を察した。でも僕は、答え合わせが恐かったからお父さんに何も聞かずにただ後を付いて行った。抜け道を進み、十分足らずで夏希の自宅に到着する。自宅に上がると、八畳ほどの和室に布団が敷かれ、そこに夏希が寝ていた。
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