追憶の君

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 その後さ、夏樹が私の胸で泣きながら、夏希、死なないでよって言った時、私ね、心の底から死にたくなくなった。一旦は自分の死を受け入れたはずだったのに、生きたいって思った。それと同時に、こんなに手の掛かる男を置いていけないなって思った。一人にしちゃダメだって思った。だから私ね、その時に決めたの。生まれ変わるって。夏樹はもしかしたら、私が咄嗟に君を慰める為に口から出まかせを言ったって思っているかも知れない。だけど私、本気だから。絶対に生まれ変わって夏樹にもう一回会いに行く。そうじゃないと私の気が済まないの。一ヵ月じゃ全然足りないし、私って欲張りだからさ、もっと夏樹を一人占めしたいんだよね。そんな事、無理だって思ってるでしょ? でもね、考えてごらん。私達はもう既に奇跡を起こしているんだよ。日本だけでも一億人以上人がいる中でたまたま出逢ってさ、お互いが月に魅了されてあの場所に引き寄せられて、性別も違うのにお互い同じ名前でさ、そんな二人が恋に落ちてって中々の奇跡だと思うよ。
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