追憶の君

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 しかもさ、お互いが死に近い位置にいたからこそ出逢えたんだよ私達。 私は余命宣告されていなかったら、あそこの絵を描こうとは思わなかっただろうし、夏樹も死のうとしなければ、あそこを訪れる事はなかったと思う。そう考えたらさ、私達は凄く奇跡的な運命に導かれて、人生が重なったんだよ。何かそんな奇跡に比べたらさ、生まれ変わりぐらい大した事ない様に思えるんだよね。  だからね夏樹、私の事を待ってて。よくさ、ドラマとか映画でこういう時って、私の事は忘れて幸せになってって言ったりするじゃん? 私、そんな綺麗事を言う気は毛頭ないから。夏樹が私以外の女といるの許せないし、私以外の女と幸せになんてなって欲しくない。誰にも譲りたくないんだよね、夏樹の事。だから意地でも絶対に夏樹に会いに行く。何年掛かっても絶対に。  だから本当に夏樹に申し訳ないんだけど、生きていて下さい。何年かして私が生まれ変わった時、その世界に夏樹がいないなんて私耐えられない。夏樹がいない世界なんかいらないし、夏樹がいない人生なんて考えられないんだよね。
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