俺はヒーローになれない

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 体育祭後の高校3年 「誰か俺を殺してくれ」  クラス対抗リレーのアンカー。恵まれた身体に整った顔。そんな俺がアンカーでビリからトップへ返り咲いたら、そんなのヒーロー間違いなしだろ。ラブレターの嵐だろ。校舎裏は俺への告白で予約が殺到に決まってんだろ!  なのに何で、どうして最後の最後で転ぶんだ、俺! あと一歩ってところでよお!?  「何だ、案外元気そうだね」  クラスのマドンナのさゆりちゃん。羞恥と苦悶で身を捩らせていた俺は、そそくさと体育座りでいじけてみせた。 「全然元気じゃない、誰か慰めてくんねえかな」 「よしよし、憐れ哀れ」  ポンポンされる俺の頭。惨めな男を演じてみるのも悪くない、ヒーローはその他大勢に譲ってやろう。  誰がどう思おうが、今日の主役は俺なんだから。  
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