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「おはよう!木元くんは元気ないわね、どうしたの?」
阿部さんは、冬の寒い朝だというのに、満面の笑顔で嬉しそうに俺に話しかけてくる。俺などに会えたことがそんなに嬉しいのだろうか。
おそらく三十代半ばくらいの、若いとは言いがたい女性だが、こういうところは可愛いと思う。人に好意を示すことを躊躇わないのだ。
阿部さんには、入社した時に研修で俺の担当になって以来、良くしてもらっていた。
「久しぶりね。ついに副リーダーになったって聞いたわ、おめでとう!木元くんは話しやすくて、みんなから信頼されてるからよ。きっと」
阿部さんは、俺のささやかな昇進を自分のことのように喜んで褒めてくれる。研修の時からそうだった。彼女と話すといつも元気になれるので、俺は彼女と話すのが好きだった。
「ありがとうございます! そう言ってもらえるのは嬉しいですよ」
阿部さんが素直だからだろうか。答える自分もいつもより少しだけ、素直な気持ちを口にしている気がする。
しかし、その上がったテンションは、阿部さんが聞いてきた次の質問によりガクリと落ちることになった。
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