4. この気持ちに名前をつけるとすれば

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そう、彼は周囲に馴染(なじ)めない自分に(あせ)りを感じたり、置かれた状況でどうやったら上手くやっていけるだろうかと考えている、普通の新入社員なのだ。 ただそれを、顔にも態度にも出せないだけで。 彼の周囲の人間が、彼の無表情に対する不満をこぼすのを見る度に、そう思えた。 だからきっと阿部さんみたいに、そのままの自分を受け入れてくれる人と話したら、きっと嬉しいし、少し安心している。 それからは、彼の無表情な顔や素気なく見える態度を気にすることなく、こちらから笑いかけて、自分のペースで接することにした。 多分、それで良かったのだ。 研修後も会えば橘の方から礼儀正しく挨拶したり、話しかけてくることから、彼の数少ない理解者になれた気がした。
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