番外編⑥ 二藍ランの第百回ファイト日報Ⅱ

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ラン「やっぱり、本当にこの件からは手を引いた方が良さそうよ」 ハヲ「そ、そうっすね。自分が一番最初に不審な推薦候補者を見つけたのが悪かったっす……」  事の重大さにランとハヲはますます暗くなった。一方でガリーの知識と推理力は止まらない。二人が暗くなっていてもお構いなく話し続ける。 ガリー「えっ……こんなに調べたのにやめるんですかぁ? 勿体ないですぅ。では、せめて最後に私の仮説を裏付ける事実だけ聞いて下さいよぉ」 「それは聞いておこう」 ガリー「ほら、二藍先輩もズイ先輩も気になっているではありませんかぁ」  ガリーは眼鏡を光らせてマシンガントークを続けた。ランとハヲが何かに気がつき顔を見合わせたが、相変わらずガリーはお構いなしだった。 ガリー「第三回から99回ファイトまで、不思議なお婆さんは毎回現れたと言いましたが、ある参加者達の前にしか現れないのですぅ! それは……」 「紅葉(くれは)族と白雪(しらゆき)族のファイト参加者の前にしか現れない。そうだろう?」 ガリー「さすがですぅ。ご名答ですぅ。そして、興味深いことに、二代目女王の白雪(しらゆき)ミルク様は、白雪族の出身でした。彼女は、即位三年で不老不死の研究を二代目王に告発されて流刑となっているのですぅ」 「つまり貴様が言いたいのは、”ファイト”に現れる不審な人物は何千年も前に流刑された、二代目女王の白雪ミルクの可能性があるということだな。だから不審な人物は紅葉族と白雪族と接触を図っていると……」  紅葉族と白雪族は雲の国の西部に存在する魔法民族である。両族は昔から友好関係にあり、切っても離せない関係にある。だから、ガリーは”白雪ミルク”が紅葉族と白雪族出身のファイト参加者に理由は知らないが声をかけているのだと予測した。  しかし、”ファイト”の開催地である”平和の森”は何人たりとも立ち入りを許されない極秘地帯だ。ましてや流刑になった罪人をその内部に入れることはありえない。あくまでも、これはガリーの仮説でしかない。 ガリー「はい。ちょっと発想が飛躍しているかもしれませんが……どうですか? 私の仮説は…ってあれ?」  ガリーは自分の目の前にいるランとハヲが絶望の表情で自分を見ていることに気がつく。特に、ハヲは今の今までガリーと会話をしていたはずなのに、どうやらかなり怯えている様子だ。  何か違和感を感じたガリーは今までの会話を思い出す。ハヲはいつもガリーの事をガリ勉ガリーちゃん、ガリーと呼ぶ。貴様などと呼ばれたことは一度もない。  後輩想いのランに関しても同様だ。彼女も下の者を貴様などと呼ぶことは決してない。では、今までガリーが会話していたのはいったい誰なのか……。
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