番外編⑥ 二藍ランの第百回ファイト日報Ⅱ

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 すると突然、至極がランを鼻で笑った。ガリーは冷徹な上司の行動に余計に混乱していた。 至極「ラン。お前なぁ。最初からなぜ俺に頼らなかったのだ。同期で先に出世した俺への嫉妬心か?」 ラン「いきなり何? 馬鹿にしてるの?」 至極「違う。そうではない。お前の情熱には根負けだ」  至極がランとハヲ、ガリーを摘発するはずだったが、話しの流れが変わってきたとガリーは感じた。そして、なぜか至極はランの前では普段見せない自然体の表情をしていることにも驚いた。 至極「実は不正のような推薦候補者と、第三回のファイト以降に現れる不審な人物。これらは俺も気になっていた。そして生徒想いのお前がこの点に不信感を抱かない訳がないと思っていた」  そう言うと、至極は一番奥の本棚がある場所へ歩いていき、比較的新しい分厚いファイルを三冊持ってきた。 ラン「気になっていたってどういうこと? まさか、アンタも調べていた……とか?」  至極は黄色い眼光を怪しく光らせ、首を縦に振った。 ガリー「そ、そうだったのですかぁ……」  まさかの彼も共犯者だったのだ。しかも、政治の一族出身。性格に難こそあるものの、これ以上の強い味方はいない。彼のファイルの中には何が書いてあるのかわからない。だが、目視で見たところ紙は百枚以上はありそうだ。 至極「ヴェン。貴様はまだ若い。今のうちにこの件から手を引け。俺はこの件を調べたことで左遷されるなら本望だ」 ラン「どういう風の吹き回し? アンタ、あんなに出世出世って拘っていたじゃない」  突然の至極の協力発言にランは驚く。 至極「別に。お前だけが左遷されても張り合う相手がいなくてつまらないだけだからな」 ラン「あ、そう……。まぁアンタが協力してくれるなら心強いけど……」
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