22人が本棚に入れています
本棚に追加
五人は敵の出現に備え、注意深く森の中を進んだ。相変わらず所々に例の髪の毛は落ちているが、何もしてこない。やけに静かなのが嵐の前の静けさなのか、五人をより一層緊張させた。
暫く歩いていると、美里は不気味な髪が落ちているこの森に違和感を感じた。
美里「皆、待って」
足を止め、他の四人に声をかける。美里の声掛けで皆が彼女を見る。
リング「美里、どうしたの?」
サジノスケ「何だ?! 敵かっ?! 何の音も匂いもしないけど……」
森育ちの野生児、サジノスケはあたふたしている。
美里「何だか変だと思わない? この髪の毛の持ち主は、きっと髪の毛で攻撃しているはずなのに、落ちているだけで森に争った跡が全くない」
美里の言う通りだった。戦闘があれば何かしらの痕跡が地面や木々にあるはずが、全くない。森は異常に奇麗すぎた。そして、耳のいいサジノスケなら、争った音があればすぐに気がつくだろうが、彼はそのような音が聞こえたとは一言も言っていない。
ウラ「確かに。変だわ」
シイ「さっきから、そう思っていた」
リング「言われてみれば、そうだね。おかしいかも。さすがだね! 美里! シイ君!」
サジノスケ「お、俺もさっきから、き、気付いていたぜ~」
リングの気を引こうと、サジノスケは見え透いた嘘をつく。ウラが白い目で彼を見る。
ウラ「……」
サジノスケ「……な、何だよ!ウラ。」
サジノスケは動揺する。ウラに見られ、明らかに目が泳いでいる。
美里「サジノスケ君、すごいね!」
美里が優しく彼をフォローする。思わぬ助け舟にサジノスケは安堵する。
最初のコメントを投稿しよう!