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「先程は巻き込んですまなかった。…あの道普段は一般人が通らないから油断していたんだ。まさかこうなるとは思わなくて…怖い目にあわせたよな?」
「いや…まぁ…自分は大丈夫ですからお気にせず…」
自分に怪我が特にあるわけでもなく無傷なので大丈夫だがむしろ、ヨルとしては【あの集団は何であったのか】それが知りたいのであった。
しかし、初対面の人に話すようなことではない、個人の問題関係に見える為聞くにも聞きずらい…。
「君には先程巻き込んだお詫びとしてカフェに連れて来たのもあるが、【もう一つ】君自身にようがあって…」
一体なんのようだろうか?自身が記憶をなくす前に実は会っていたとかだと個人的には、自分の情報が手に入る為嬉しい。
「…君は【持っている側】の人間だな?」
「へ?」
「んー、自覚があって無い状態か…」
いったい何を言っているんだ、この青年は…
ヨルの顔が引き攣っていく。【持っている側】の人間?まるで怪しい宗教みたいじゃ無いか。
青年はヨルの顔が引き攣っているのを知らないのか、話をどんどん進めていく。
「では、デリカシーがないことを聞こう。身体で何処か不調なとこないか?…いや、初対面の人に聞くのはアレだと思う君の考えは、正しいが…」
言いたいことが言わずにも伝わってしまうほど自分自身余程酷い顔をしているのだろう。
「自分は……性別が無くなりました…あのこれって不調に入りますか?」
「嗚呼、勿論不調の方に入る。他にはないか?」
「あ、あと記憶喪失です。」
青年の動きがピタリと綺麗に止まった。少しの間ま間が空いたが何もなかったかのように青年は、青年はまた話だした。
「……そっちの方が大変じゃないか?まぁ、なるほど。記憶喪失と性別が不明か…中々珍しいパターンだ…」
「パターン?」
「まぁ“今は”気にしななくていい。言葉で説明しなくても後に身を持って分かるからな。で、記憶喪失君。」
“記憶喪失君”何とも言えないニックネームだが今の自分の状態に合ってるから何ともえない…
ヨルとしては医者以外の人とのキチンとした会話がこの青年で初めてなので、いきなりニックネームを作られて、キョトンとなるしかないのだ。何とも言えないまま頭を纏め、ヨルは返事をした。
「はい」
「お詫びとして何だけど…君、バイト先や働く所あるか?記憶喪失なら全て忘れていて働き先も忘れてると思うから“うちで働かないか?”」
「え」
…これはどう受け取れば良いのだろう…?
その前に本当にお詫びとして受け取って良いのか?しかし、家賃や電気代、水道代など払うには金がいる…正直働けるなら働きたいが…この名前も知らない“怪しい”青年の所で働くべきなのだろうか…
ヨルが眉間に皺を寄せ唸りながら考えていると青年は、また口を開いた。
「今なら時給千六百円…どうだ?魅力的な物件だろ?」
ニヤリと挑発的な笑みを青年はこちら向けた。
「その話のった…聞く順番が違いますけど…その…仕事内容は?」
「なぁに、ココの経営さ。」
「へ?」
青年は真っ直ぐコチラを見て笑顔を向けた。さっきまで、何とも考えなかった、この【カフェ】に来たことが…あの通りで青年に会ったことが.まるで、ココまで全て青年の手の内であったかのように感じる。そして目の前の青年は絵に描いたようかのようにとても良い笑顔を浮かべている。
「今日から此処が職場だ。調理担当【樋高 蒼葉】コレからよろしく、記憶喪失君。」
…………拝啓顔も名前も覚えてないお母様方ヨル《自分》、仕事場見つけました。
「じゃ、また明日。夜の七時から営業してるからこいよな?」
アレから流れ作業のように、契約書など色々書いていたら、気づいたら日が昇っていた。
そのおかげで、一夜を眠らず過ごしたせいか、ヨルの視界はぐらつきもし、頭がフワフワしている。
正直今すぐ寝たいと思う気持ちを抑えひたすら歩いていた。
….もし、仮にこの眠気に負けて“その辺”で寝ていたらただの不審者であるため、通報されこれ以上“普通”の生活が出来ないかもしれない……
そんな頭で何とか自身の家だと思われる場所に着くことができたが、あの【仕事場】から案外近くコレから夜も安心して行くことができるな、と眠たく重い頭でそう考えたのを最後にスイッチが切れたかのように夜はお布団に吸い込まれ眠りについた。
スッと目が覚めるような感覚が起こり、ヨルは目覚めた。まだ目覚めたばかりで覚醒してない頭でボンヤリと少し過ごしてから、重たい身体を起こし、カーテンを開けようとした時ヨルはふと思った。
何故暗い?カーテンを閉めていても朝日が登っている間は光が当たっている所はカーテンの生地が薄らと透けるように見える。しかし、どうだろう?
このカーテンには光が当たって透けている様には見えない…ヨルの顔に冷や汗が滴れる。
バッとカーテンを開け空を見上げてみると空は茜色に染まっている。
…時刻は?
ヨルは急いで電子時計を手に取り見た。
【六時四十分】そう電波時計には書かれていた。
冷や汗が垂滴れたように嫌な予感はどうやら、当たってしまったようだ。
そんなことを考えさせてくれる暇もなく電波時計の時間は刻々と過ぎていく。
約束の時間まであと【十五分】
ヨルは疲労した体を叩き、必要最低限だと思われる物をバックに入れ、飛び出すかのように外へと出て行った。
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