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幻の大泥棒
これは、とある一国の物語である。
地平線には満月が浮かぶ、宵の刻。前触れもなく他国から攻撃を受けた。
国土の東側半分が焼失した。
化学兵器により土壌は汚染され、作物の育たない死んだ土地となり、やがて町は、スラム街と化した。
当時青年だった王子は、戦死した父に代わり王位を継承した。
それから三十年が経ち、立派な国王へと成長した。
敵国に奪われた国宝『神の種』を取り戻し、失われた土地を復活させたいと、一時も考えない日はなかった。
いつからか、スラム街の外れに、必ずではないが願い事を叶えてくれるというボックスが存在する噂が流れた。
欲しいモノを書いた紙を拳大のカプセルに入れ、ボックスへと投入しておくだけ。
『幻の大泥棒』と呼ばれる人物が気まぐれに現れ、ボックスの正面に付いているレバーを二回転半、ガチャガチャと音を立て回転させる。取り出し口へと転げ落ちたカプセルを開け、そこに書かれているモノを盗んでくるという仕組みだ。
そう、ボックスは、ガシャポンだった。
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