依頼ボックス

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依頼ボックス

 辺りは、荒廃した建物や車、瓦礫の山など、道路はひび割れ、所々アスファルトが隆起していた。 「ショウ兄ちゃん、どこに向かってるの? この先は確か行き止まりだよ」  「国境の谷に用事がある。正確には谷へ突き出した丘にある物だけどな」    アキラはふうんと言って、それ以上訊かなかった。  町は徐々に森へと変化し、そこを抜けると丘のある国境へと辿り着いた。  見上げると、丘の稜線が空と地面を隔てる一本の線に見え、その線に乗るようにガシャポンがあった。 「何これ?」ガイが訊く。 「ガシャポンだ」 「見れば分かる。動くのか?」 「これは依頼ボックスだ。盗みの依頼を書いた紙が、プラスチックボールに入っている」 「一、二、三……五個あるよ」  宝物でも見つけたかのように瞳を輝かせるキララは、一生懸命、中を覗き見た。 「ああ。でもこれから取り出すのは一つだけだ。その一つの仕事が終わったら、次のボールを取り出すことにしている」    ショウはレバーを回す。ボールが一つ取り出し口に落ちて来た。  四つ折りにした小さなメモ用紙が入っていた。 『神の種』をお探しください。報酬金額はご要望のままに。連絡先:xxx-xxxx-xxxx セーラ』  スラムで金は役に立たない。俺たちが欲しいのは今日を生きるための食べ物なのにな。   「じゃあ、その報奨金、俺にくれよ。俺もその『神の豆』を盗む手伝いをするかさ」 「種な」    ショウは少し考えた。ガイの鍵開けの腕前は使えるかもしれない。
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