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作家・雷斗と書生・晴幸
ここ二、三日は残暑の名残りとでも言うような、照りつける陽射しも依然緩まず、日暮れになっても西向きの部屋は一向に熱も捌けず、一心不乱と洗濯物を畳んでいた玖波羅 晴幸の額はじんわりと汗ばみ、熱を逃がすように着いたため息が部屋に大きく響いた。
「もう立秋も過ぎたというのに、なんて暑さだろう──」
例年の葉月には肌寒さすら覚えると言うのに、今年の夏は未だ居座るつもりかと、畳んだ衣類を脇へ寄せながら扇風機の前に座った晴幸は、熱れを孕んだ風を気休めのように身に受けた。
晴幸が書生として人気作家、四万城 雷斗の屋敷に入って二度目の夏は、最高気温の記録を更新し、なんと二十八度越えの日を連続で経験させる猛暑だった。
静かな部屋にモーターの発てる単調な唸りがやけに大きく聞こえ、この暑さは一体いつまで続くのだろうと晴幸がもう一度ため息を着いた時、いささか喧しく名前を呼ばれた。
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