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出会い ①
4月吉日。
綿菓子のような雲がところどころに広がり、陽射しが穏やかに全てを照らす。
桜の花が咲き誇り、時折吹く風に花びらが、ひらひらと舞う。
こんな日は、芝生の上に寝転がって昼寝をしたいな。
そんなことを思いながら、渡辺和は真新しいスーツに身を包み、これから4年間通う大学に向かっている。
今日は大学の入学式。
すぐに道に迷うしスマホのナビアプリを使っても、なかなか目的地に着かない和は、入学式開始時間の1時間半前に大学に着くように家を出ていた。
なので周りには、和のようにスーツを着た人は、見られない。
そんな時、和は視線を感じた。
振り返り、視線の元を探すと…。
あ、あれは…。
視線の先にはコンビニの駐車場の物陰に隠れながら、キジ猫が和をじっと見つめていた。
猫~。
猫が大好きな和のテンションが一気に上がるが、和と目が合うと猫は怯え、緊張が走る。
「怖くないよ~」
一歩、猫に近づくと、猫は『フー!!』と威嚇する。
「怒らなくても、大丈夫」
またもう一歩近づくが、猫は威嚇、警戒をする。
仕方ない話だ。
なぜなら和の容姿は学ランを着ると応援団長をしていそうなぐらい、いかつくガタイもいい。
目つきも鋭く、優しそうな人とはかけ離れ、どちらかというと強面。本人は笑っているつもりでも、目が笑ってないように見え、より恐ろしい。
そんな和だが、本当は心優しき青年だし、親しい友達が欲しいし、動物も大好きで仲良くなりたい。
なのに和は人間だけではなくでなく、動物にも怖がられ避けられる。
実際今もそうで…。
そろりそろりと猫に近づくと、怯えて体が動かなくなったのか、猫は微動だにしない。
和は猫がこれ以上怖がらないように、ゆっくりと近づき、あと少しで手が猫に触れそうになった時、
「あ!」
ピューっと猫がその場がから、逃げ出した。
「待って」
和は猫を追いかけたが猫の姿はもうなかった。
「今日もダメだったな…」
がっくりと肩を落としていると、コンビニの裏手から「やめてください!離して!」と声が聞こえてきた。
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