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出会い ④
「わぁ、うれしい。和…さんってお名前なんですね。僕は坂下伊織と言います。よろしくお願いします」
「渡辺…和です。こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
手を差し伸べられたので、和はズボンで手汗を拭いて、伊織と握手をした。
「和さんって、大きな手なんですね。かっこいい」
伊織がぎゅっと握手したてに力を入れたが、和には微かに力が入った程にしか分からず、それよりも自分の力で伊織の手を握り潰してしまわないか、ハラハラする。
「和さん。午後から、何か予定ありますか?」
握手した手を離さないまま、伊織は聞いた。
「特に何もないけど…」
握手をしている方の和の手は、緊張で手汗がすごい。
そっと手を離そうとするが、伊織が離すまいと、また握ったてに力を入れた。
「そうなんですか!?じゃあお会いできませんか?その時何かお礼させてください。あ!そうだ!僕、ここに来る前に、かわいいカフェ見つけたんです。そのカフェでお茶しませんか?って、僕が和さんと一緒に行きたいだけなので、お礼になってませんね。えへへ」
一気にそこまで言うと、伊織は恥ずかしそうに笑った。
よく笑う子だな。
伊織の笑顔が可愛くて、和は見惚れてしまった。
「あ、でも、お茶しながらお礼なにがいいか決めたらいいですよね。僕、和さんとたくさんお話ししたいです」
俺とたくさん話がしたい?
今までそんなことを言われたことがなかった和は、どう反応していいか分からない。
「えーっと…、きみは、俺のことが怖くないのか?」
注意深く伊織の様子を伺う。
「怖くありませんよ。和さんは、くまさんみたいでかわいいです」
「可愛い!?」
驚きのあまり、和の声が裏返る。
「はい。ハチミツ好きのくまさんみたい」
今まで言われたこともないし、この先も言われることは絶対ないだろうキャラクターに似ていると言われ、『この子の目は大丈夫だろうか?』と、心配になった。
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