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新たな出会い ④
「隠れ場所?」
「なぜだか俺、昔から目立つみたいで、いつも誰かが周りにいて、たまに息が詰まりそうになるんだ。そんな時はあそこに1人で行って、昼寝したり読書したり、1人の時間を過ごしていたんだ。逃げ場みたいな場所で」
『なぜだか昔から目立つみたい』なんて、他の人が言えば鼻につく言葉だが、北田が言うと嫌な気はしない。
「最近静かに過ごせる場所がないって伊織くんがぼやいてたのを聞いて、俺もその気持ち良くわかるから、あそこを紹介したんだ」
「でも、そんな大切な場所だったんですね。でも先輩、他に一人になれる場所とかるんですか?」
さっき見た感じでは大学にいる間、北田の周りはいつも人だかりだろう。
それはさすがに疲れる。
和は北田のことが少し心配になった。
「他にいい場所を探してるんだけど、なかなかなくて……。でも心配しないで、大学広いし、そのうち見つかるよ」
北田は微笑んだが、自分たちも新しい場所を探していて見つからなかったのだから、北田が新しい場所が見つかるのは難しいだろう。
新しい場所を見つける間に、北田先輩はまた倒れてしまうかもしれない。
う〜んと和は感がていると、いい考えが浮かんだ。
「そうだ先輩。喉乾きませんか?何か飲み物買ってこようかと思うのですが、何かリクエストありますか?」
「え?リクエスト?特には……」
「じゃあ、適当に買ってきますね。伊織、ちょっと来て」
「?うん」
なぜ急に和がそんなことを言い出したか伊織も北田もわからず首を傾げたが、そんなことはお構いなしに和は伊織の手を引いて、医務室から出た。
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