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 彼女はしばらく、何かを考えるように神妙な表情をしていた。  しかしはたと目を見開いたかと思うと、ついに口を動かした。 「――わかりました」  そして彼女は10万円に手を伸ばした。 「コウジさん……なんて言っていいか、とにかく、感謝します」 「それでいい、それでいいんだよ」  彼女は10万円を胸に抱き寄せると、深々と頭を垂れた。 「ありがとう……ございます」 「お役に立てて私も嬉しいよ。でも、約束は守るんだよ」 「はい、勿論です」  私はそのまま、立ち上がると伝票を持って店員の方へ向かった。会計を済ませなければならないからな。パパ活であれば、これは常識的な行動だ。  ――そして会計を終えて席に戻ると、そこには彼女の姿が無かった。
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