1/1
前へ
/13ページ
次へ

 その夜、早々に会う約束を取り付けた。  私はこういった時に利用する店をいくつか知っているが、今回は少し良い肉料理を味わうことのできるバルを予約した。オープンな作りであるほうが相手の警戒心を解きやすいという狙いも有る。  私は早めにテラスに席を構え、樽ビールを頂きながら待つことにした。  程なくしてアプリを介してメッセージが届き、私は現在地を伝える。  そこから更に数分後、アヤセと思しき人物がペコペコと頭を下げながら近づいてくる。正直言って驚いた。これほどまで上玉とは思わなかったからだ。 「す、すみません、コウジさん、ですよね?」  コウジというのは私の偽名である。私は微笑みながら頷いた。 「よかった。私、アヤセといいます、よろしくお願いします」  彼女はリクルートスーツ姿で現れた。私がそれを不思議そうに見ていることに気がついたのか、彼女は自分の服装を一瞥すると、困ったように笑った。 「あ、すみません。今日就活セミナーがあったもので……」 「いや、いいんだ。なんだか新鮮だったから、つい見てしまって」  どうやら彼女の大学生というのは、肩書だけでなく本当らしい。  甘めのコーデで現れる女子が多いこともあり、逆に新鮮味があって良い。  それにスーツという鎧に身を包みながらも、中々に魅力的なスタイルであることが分かってしまう体型だ。変に露出がなくて、私も紳士であり易い。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加