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私は腕を組みながら数度頷いた。
彼女の話に対してというよりも、自身の直感に対してという方が正しい。
「――なるほど。それで、自分も資金を出そうと?」
「いや、そんな大それたものじゃなくて……ただ、制服だけは、私が買ってあげたいなって、思ったんです」
「それで、今日の設定金額が、朝までで7万円という訳か」
「……無理なお願いなのは分かっています。一度で何とか済まそうとしている身勝手も分かっています……」
彼女はきまり悪そうに眉を顰めた。
私はそんな彼女を覗き込むようにして問いかける。
「つかぬことを訊くけどさ、朝までってどういう意味か、分かってる?」
彼女は少し顔を背けながら、コクリと頷いた。
「……はい。分かっているつもりですが……あの、出来れば、その、あまり変なのは怖いので、出来れば、シンプルな、普通の、カップルみたいに……」
彼女はモジモジと身体をくねらせる。
何を持ってシンプルなのか、彼女にとっての変なのとは何か、小一時間ネチネチと問い詰めたいところだが、良かったな、私が紳士で。
「……まだ何か、食べたいもの、ある?」
「いえ、大丈夫です……」
「それじゃあ――」
私はジャケットの内ポケットから、10万円の束をテーブルの上に置いた。
彼女は目を丸くしている。
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