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私は置いた10万円の束を、そのまま彼女の前まで押し滑らせた。
「今日は楽しませて貰ったよ。これで弟さんに制服を買いなさい」
「え!?」
「少し多めにあるから、残りは君の好きにしたら良い」
「いや、私、何もしてません、困ります!」
彼女は酔いも醒めた様子で取り乱した。私は微笑みながら、手と顔で落ち着いてと促した。それでも彼女はブンブンと頭を振った。
「あの……ありがたいのですが、これじゃあ、コウジさんに悪いです。私はなにも、お金を頂けるようなことを、していないので……」
「……私で良かった。そう思ってくれれば良い。卑しい男ではなく、私のようなパパに出会えて良かった。そう思ってくれれば良い」
「コウジ……さん?」
「私はね、君のように素敵な女性が、自らを安売りするような行為に心を痛めているんだ。自らも楽しめている女性は良い、だが君は違って見える」
「……」
彼女は図星とばかりに下を向いて、口を尖らせている。
私は続けた。
「いいかい、このお金は君にあげよう。だがこれを、パパ活というものとの、手切れ金だと思ってもらいたい。分かるかな?」
彼女は黙っていた。混乱しているのかも知れない。
「……簡単に言う。私は君のような女性を救いたい。だから今日でパパ活を最後にして欲しい。それを約束してくれるなら、喜んでこの10万円を君にあげよう。間違っても、パパ活は楽に儲かるものだなんて、思わないでくれ」
矛盾しているな。
こんなに楽に大金を渡しておいて、虫のいいことを言っている。
でも私なりに、こういった話が通じる相手を選んでいるつもりだ。
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