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「それで、なんで僕を家に入れたんだよ」
彼女と話しているうちに少しずつ落ち着きを取り戻してきた僕はようやく本題に切り込めた。
「新開くんがうちに来たいって言ったからだよ」
「適当な理由つけて拒否するとかあっただろ」
「それじゃ嘘つきになっちゃうじゃん」
我儘を言う子供のように古藤さんは唇を尖らせる。嘘をつきたくないのはわかるが、この後の展開を彼女は想像しないのか。
「警察を呼ぶよ」
僕はポケットのスマートフォンに触れた。彼女は特にうろたえもせずこちらを見ている。
ただ静かに、事の行く末を見守っている。
「僕を家に上げてまずいことになる、とは思わなかったの」
「思わなくもなかった」
「じゃあなんで」
「なんでだろうねえ。まあ何にせよ、ここで嘘をついたら前提がひっくり返っちゃう。正直に生きて捕まるならそれが結論だよ。正直者は結局、馬鹿を見た」
正直者は馬鹿を見るだけ? 彼女の問いが蘇る。
どうして彼女はこんなにもそこに拘るんだろう。
「古藤さんは嘘つきが嫌いなの?」
彼女の答えは僕の予想を少し外す。
「嫌いじゃないよ。苦手なだけ」
アレルギーみたいなものだよ、と古藤さんは笑った。
わかりやすいなと苦笑いしながら、それなら彼女にも僕と同じように絶望した瞬間があるのかもしれないと思った。
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