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 自分が猫アレルギーだと気付いたのは小学二年生の夏だ。  友達の家に遊びに行ったとき、そこに濃い灰色の猫がいた。首には黄色の首輪をつけていて、友達はその猫を「レオ」と呼んだ。  名前を呼ばれたレオは友達の脚に擦り寄ってきて、かわいいなあと僕は思った。 「触ってもいい?」 「いいよ」 「わあ」  許可を得て、灰色の猫に手を伸ばす。レオは逃げたり威嚇したりすることもなく、大人しく僕の腕に収まった。  さらさらとした毛の触感と、その奥の仄かな体温が心地いい。ぎゅっと抱くと、にゃ、と短く鳴いた。 「かわいいね」 「でしょ。ぼくのおとうとなんだ」  友達は自慢げに胸を張った。いいなあ、と僕は思った。うちでも猫飼いたいなあと。  しかし、異変が起こったのはそのすぐ後だった。  友達とカードゲームをしている最中、向かい側に座る彼が僕の手札を覗くようにして、顔を引きつらせる。 「え、なにそれ」  彼の震えた声を不思議に思い見てみると、半袖から伸びる両腕がすべて真っ赤に腫れあがっていた。ぼこぼこと肌が隆起し、無意識に掻いていたのか、ぽつぽつと傷もできている。  気付けばおかしいことばかりだった。目が腫れぼったい。鼻が詰まっている。熱はないのに身体が熱い。 「猫アレルギーかも」  友達の母親は車で僕を病院に連れていく道中でそう話した。強烈な痒みに耐えながら助手席に座っていた僕は尋ねる。 「アレルギーってなんですか?」 「うーん、身体が受け付けないんだよね」  友達の母親は何の気なしに言ったのかもしれない。  それでも家に帰ったら「猫が飼いたい」と話そうと思っていた僕にとって、その言葉はとても重いものだった。 「新開くんの身体は、猫が嫌いだって言ってるの」
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