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「なんで新開くんはうちに来ようと思ったの」    古藤さんの問いかけで我に返った。 「なんでって」 「おかしいと思うんだよね。私が泥棒だって気付いても、別に新開くんだけはそれを突き止める必要はなかったでしょ? だって新開くん、猫飼ってないし」  確かにあのクラスで彼女を除けば、僕だけが猫を飼っていない。  それは唯一被害を受けていないということだ。僕だけは犯人を捜す必要がない。だから彼女も迂闊に僕の質問に答えてしまったのかもしれない。 「正義感ってやつ?」 「いや、ちがうと思う」 「じゃあなんでよ」  彼女の声を援護するように、周りの猫がぎゃあぎゃあと猫が騒ぎだした。金網が叩かれて甲高い音が響く。  どうして僕はあのとき彼女に「じゃあこれから行ってもいいかな」と言ったのだろう。こんな僕にとっては地獄のような場所に。  ──飼ってないけど、猫はいるよ。  彼女の言葉を、声を思い出す。  それを聞いたとき僕は自然と言葉が口をついて出ていた。それはどうしてか。 「なんとなく、遊びに来てほしそうだったから」  まるで新しいゲームを買ってもらった小学生みたいな。  例えるならそんな声の響きだった。僕でいいのかとも思ったけど、ちょっと嬉しかったんだ。   「だから遊びに来たんだよ」  僕は古藤さんを見る。  猫の喚きに埋もれた彼女は広いリビングの真ん中にひとり立っている。彼女はいつもどこに座ってるんだろう、と僕はそんなことを考えた。
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