つめたい指先

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いつのまに季節はかわっていたのだろう。 静まりかえった夜に、ためいきがおちる。 いや、ずっと見ないふりをしてきたのだ。 ふたりの時間が忙しさに侵食されていることを。 気がついたときには、もう、つめたい空気が流れていた。 ふとんの隙間からすべりこんで、 あなたのからだに、そっと足先を絡ませる。 「あなたのすべてが欲しい」 私が囁くと、あなたは怯えるように小さく息をのんだ。 触れた先からは、緊張が伝わってくる。 ひえきった私のからだは、 先にベッドに横になっていたあなたの熱を 容赦なくどんどん奪いとっていく。 また、大好きなあなたといっしょに寝れる あたたかいおふとんの季節がやってきた。
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