依頼

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「帰れ」 有坂有坂龍一はつれなく玄関のドアを閉めようとする。 しかし言われた主は、 「私がここに来ている時点で、君に選択肢がないことぐらい、察することが出来るだろう」 と、ドアが再び閉められてしまわないように、両手で押さえた。 都心から新幹線に乗って電車に乗って、それからバスにも乗らないとたどり着けないド田舎の有坂邸を訪れたのは、警察庁次長の桜庭である。 有坂龍一の唯一の上司でもある、桜庭は、 「××国の国王が崩御されたことは知っているだろう。今回はアン王女からの直々のご指名なんだ」 と言った。 その言葉に、龍一は盛大に眉をしかめ、それでもようやく、桜庭を中に招き入れた。 リビングにいた龍一の妻君の美百合にあいさつしようと身を正す桜庭だったが、その前に龍一がぴしゃりと言い放つ。 「こんなやつに、茶なんか淹れる必要はないぞ」 「そういうことは、せめて私のいないところで言ってくれないか」 桜庭の忠告が功を奏したのか、美百合はちゃんと紅茶を淹れてくれた。 龍一は気に入らない顔をするが、特に何も言わないので、相変わらず美百合の尻に敷かれているのだと覗える。 そこで、 「ああ、妻君もここで一緒に話を聞いてくれないか」 と、美百合を巻き込みにかかった。
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