5人が本棚に入れています
本棚に追加
🔔3年前の贈り物
ーガタン、ガタタン…
窓の外には、いつも通りの見慣れた通学の景色が流れていく。冬休み前のテストが終わり下校中の僕は、この制服もあと少しで着なくなるのか…と少し感傷的な気持ちになっていた。
あ、そろそろ降りる駅。そう思ってドアの近くへ移動しようとしたそのとき、ふいに声をかけられた。
「あの…突然すみません!これを渡したくて、えっと、えっと… 受け取ってくださいお願いしますっ!」
同じ高校の制服を着た女の子が、ラッピングされた何かを、僕に一生懸命差し出している。え…僕に?困惑している間に、僕が降りる駅に着いてしまった。
ーガタンッ!
小柄な君がよろけたので、とっさに支えてしまった。驚いて、至近距離で初めて重なる視線。
「あ、ごめん…」と言うのが精一杯で、僕は君の手から包みを掴み取り、閉まろうとするドアの外へ急いで出た。
ドアの外と中でお互い困惑したままの僕たちをよそに、電車は次の駅へ向かった。ポケットからスマホを取り出すと、母からのメッセージが来ていた。
『Happybirthday & Merry Christmas!テストお疲れさま!ケーキあるから早く帰っておいで!!』
そうか、今日は僕の誕生日だった。やっと我に返って帰路についた。スマホに落ちてきた水滴を見て空を見上げると、いつの間にか雪が降り始めていた…。
家で開けてみると、それはやっぱり僕へのプレゼントだった。こんな事初めてでとても嬉しくて、きちんとお礼を言いたいなと思ったけれど、それは叶わなかった。
僕は自覚があるくらいマイペースだけど、君はとてもうっかりさんのようだ。名前も連絡先も、わかるものが同封されていなかった。同じ学校の制服だったとは思う。けれど、僕もそれから夢に向かって忙しくなり、深追いする暇もなくなってしまった。
それと、たぶんこれはクリスマスプレゼントだと思う。今日が僕の誕生日だとは、さすがに知らないよね。でも僕は、両方お祝いしてもらえた気分で嬉しかったんだ。
だけどまた会えない運命ならば、君はうっかり姿を現してしまったサンタだったという事にでもしよう。
最初のコメントを投稿しよう!