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今日の雨は、花散らしというほど強いものではなかった。しとしとという表現が当てはまるような、粒の小さい、優しい雨だ。窓を伝う滴も、貼りつき、溜まってから静かに落ちていく。有名画家が描くよりも優美で不規則な水の跡。黙して目を瞑ると、雨音が鼓膜の中で残響反射して、一種の酩酊状態にさせてくれる。そこで目を開けて文字を追えば、忽ち夢幻的な世界の内側に入り込め、単なる小噺をあの子からの言葉に置き換えてゆく。
私は自分を男だと思い、周囲にもそれを伝えてある。だが、小柄な容姿と童顔が重なり、生まれ持った女という性質に、皆が余計な配慮をするから厄介だ。
ジェンダーレスの社会になったと言う人は多いが、それを言うから異質が際立ってしまう。私のような人間は、自分が人と違うことを自認している。浅い配慮や遠慮でそう言われるぐらいならば、異質は異質と見てくれて構わない。
その代わり、人としての本質を見てほしい。
二十七年の人生の中で、偽らず本質を見てくれたのは、あの子と今のパートナーだけだった。
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