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こんにちは、虚無さん。
私にとって、''虚無''というのは隣人だ。
いや…怪物、もしくは友達?
時と場合によって、''それ''は姿を変えてくる。
例えば、眠ろうと布団に潜ったとき。
例えば、母がおいていった冷めきったお弁当を温めるとき。
例えば、家で何もしていないとき。
例えば、楽しいことが終わったとき。
理由なんていくらでもある。
学校の廊下で友達にすれ違ったとき「おぉ」と会話をする程度の温度感で、何事もなかったようにそばにやってきて、私の力を吸っていく。
力、というのもこれまた多様に。
「お風呂に入ろう」と思っていようが、
「勉強を始めよう」と意気込んでいようが、
はたまた楽しく趣味の時間を過ごしていようが、
彼は当たり前のように、その意欲を吸っていく。
「どうしてだろう、やる気になれない」
そう、思い込ませてくる。どうしても、動けなくなりそうなほどに吸われる。
これを執筆している今だってそうだ。
今回は、私が自ら、無意識に彼を封印していた鍵を開いてしまった。
抑え続けてきた自傷欲が、彼によって開放されそうになる。それを抑えようとすることでまた、彼は成長する。
「辛い、何かわからないけど辛い」
「苦しい、何かわからないのに苦しい」
そう思う私の心に、彼は口元に弧を描きながら「切っちゃえば?」と、彼は呟くのだ。
友達を怒らせたいわけでも、親にバレたいわけでもなければ死にたいわけでもない。ただ「切りたい」のだ。
切ればすべて解決だと、彼にそそのかれているようで。
彼と別れを告げるにはどうすればいいのか、私は術を知らない。
だからいつも、頭を掻きむしって彼が帰るのを待つ。
他のことをして、ハリボテの幸福で、虚無を埋めようとする。
けれど埋まらない。
埋めようとするほどに、虚無の穴から、鋭く冷たい風が吹き抜けていく。
彼と和解をするには、私が死にものぐるいで生きていく以外に道はないのだろうか。
彼を満たしてあげられるのは、他人ではなく私だが、彼を目覚してしまったのは、過去の環境や時間で、そんな過去と向き合うには、今の私は弱すぎる。
埋められない虚無の中で、私はいつも藻掻き、旗を振るようにして生きている。
どんなに嘆こうと、今日も変わらず、そうやって生きているのだ。
「こんにちは、虚無さん。今日は一体どうしたの?」
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