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いつか彼女のインタビュー記事を読もう。そう思ってから1年が過ぎていた。そのことを、アルバイトの帰り、スーパーの2階にある100円ショップでタオルを選んでいるときに気が付いた。
気が付ついてしまうとなぜか居ても立っても居られなくて、一番近くにあったタオルをテキトーに手に取りレジに向かった。
家に帰り、洗濯機を回し、弁当箱をシンクに置いて、立ったままスマホを操作する。当たり前のように名前を打ち込んで、打ち込みながら、綿棒を買い忘れたことに気づく。
去年読んだインタビュー記事はそのとき検索結果の一番上に出てきたものだったけど、なんのサイトだったのかもどんなタイトルのインタビューだったかも、何一つ思い出せない。
今回も一番上に出てきたものをタップする。画面が読み込まれているわずかな時間、記事のタイトルが『気になるあの人のスキンケア』だったと思い返す。去年見たものについて覚えていなくても、これじゃなかったことはわかる。
彼女は更新されている。
ぽんと浮かんだ言葉に力が抜けて、やっぱりやめようと思った瞬間、画面が切り替わった。
それは女性誌のWeb版だった。買ったことも読んだこともないけれど、さすがに名前は知っている。
その有名雑誌が、『気になる人』として彼女をあげている事実に、傷つくより先に疑問が浮かぶ。大学生ブロガーだったはずの彼女は、そのブログが消えて以降、一体何者だったんだろう。
浮かんだ疑問はだけど、スクロールして最初に現れた彼女の写真によって頭の片隅へと追いやられてしまう。
見るからに柔らかそうなふかふかとしたバスタオルに、うっとりとした表情で頬ずりをする彼女は、ベリーショートからちびまる子ちゃんのようなおかっぱ頭になっていた。もう赤い口紅も塗っていない。
『タオルにはこだわります。直接肌に触れるものだから』
さらに画面をスクロールする。乳白色の小さなボトルと透明の小瓶を手に持ち、くしゃりと笑う彼女が現れる。
『ファンデは卒業! スキンケアもシンプルに化粧水とオイルで仕上げます。人間もコスメも正直なのが好き(笑)』
わけもわからず鼓動が早くなる。スクロールする指を止められない。最後に、白いボトルネックに黒のVネックワンピースを合わせた彼女の写真が1枚。その下に、プロフィールが書かれている。
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