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西田景都。
その名前を雑誌で見かけたのは22歳のときだった。正確には雑誌じゃなくてムック。
すっぴん黒髪、生成りとかが好きなんだろうなぁっていう女性の間で異様に人気のあった某モデルが、自身が編集するスタイルブックみたいなものを不定期で出していて、その中の「わたしがあいたいひと」というコーナーに対談相手として彼女が出ていた。
〝角食ハンター〟と紹介されていた彼女は、黒のぼわっとしたワンピース、腰まであるロングヘアーを三つ編みにした出で立ちで、一見すると幼いけれど、華奢なアクセサリーや真っ赤なネイルに大人っぽさが漂っていた。
決して美人ではない。だけどその容姿を動物に例えるならばウサギだ。白くて小さくて丸っこくて、守ってあげたくなるような、そういう雰囲気の。
背が高くて顔がこぶし大くらいしかないモデルと並んでいる写真は、だけどちんちくりんだった。妙な親近感もあるから始末が悪い。
でも別に、彼女の容姿や対談内容で興味を持ったわけじゃない。
名前だ。
同じだった。
私も「西田景都」。
私と彼女は同姓同名だった。
ページの右下に小さく載ったプロフィールには、「1989年9月23日生まれ」とあった。私は1987年9月23日生まれ。私が生まれたそのちょうど2年後に彼女が生まれた。
名前も誕生日も同じその相手を、気にするなという方が無理な話だ。
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