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彼女のブログは、いつの間にか閉鎖されていた。
26、7歳の頃だっただろうか。清掃の仕事を1ヶ月で辞め、次のアルバイト先を探していた時期だ。彼女のことはいつも頭にあったけれど、実際の文字として彼女を摂取しようとは思わず、ブログを見ることはずっとなかった。あの日はなんとなく、思い出したように、たまには見てみるかと思って検索しただけだった。
ブログは見つからなかった。
そのことに、無性にほっとした。どんな考えからほっとしたのか、自分でもうまく言葉にできない。
でも、カクショクジンセイだかカクショクライフだかを映し出さない画面を見て、思った。
彼女がパン屋巡りをやめていればいい、と。
角食を男性に見立てたおかしなポエムを書いていたことを恥じていればいい、と。
大学生活を終え、仕事に追われ、あの長い髪を切り、爪を彩る暇もなく、ウサギっぽさなど消えてしまった、どこにでもいるようなただの普通の女になっていればいい、と。
自分に何かあったわけでもない。次のアルバイト先である本屋の仕事は苦労せずにすんなりと決まったし、レジと品出しだけの凪のような毎日には何もない。恋はもうとっくに諦めている。
それなのに、彼女の現在を知る術を失ってからも、私は彼女の不幸を願った。彼女が苦労していますようにと願っていた。仕事がうまくいかず、怖い上司に怒鳴られて、お局様に嫌味を言われていますように、と。本を棚に並べながら、おしゃべりの長い老人客の話に相槌を打ちながら、いつも、ずっと、願っていた。
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