溺れるならコーヒーの海がいい

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 「それで雅人くんとデートしてきたわけ?」  麗子が作った唐揚げを頬張りながら清美は問いかけた。  「デートって……。そんなんじゃないよ」  麗子はさりげなく一番大きい唐揚げを選んで口に運ぶ。  「いいじゃない。あんたたち昔から仲良かったんだから」  「塾と帰り道が一緒だっただけだよ」  「あら、いつも雅人君と長話しては帰りが遅くなっていたじゃない」  「違うってば」  「でも、そうなると麗子もバイトとかしないと遊べないわよ」  「そうねえ」  麗子は生返事を清美に返した。テレビのリモコンを手に取りチャンネルをぱちぱちと回した。50インチほどの液晶画面がスライドショーのように移り変わる。ニュース、バラエティ、ドキュメンタリー、料理番組。それらのどれもが興味をそそられなかったので麗子は無難なニュースにしておいた。ニュースからはメジャーリーグで活躍する選手のダイジェストが流れていた。  「ごちそうさま~」  麗子はすぐさま自分の部屋に行こうと立ち上がった。ちゃぶ台には食器がまるまる残っている。  「食器かたづけてから行きなさいよ」  「へーい」  麗子は気の抜けた返事を返して食器を片付けた。                                
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