溺れるならコーヒーの海がいい

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 麗子は決まった時間に起きる習慣を持っていなかった。けたたましいアラームに起こされることなくぐっすりと眠っている。じんわりと意識が戻ってくるのを感じた麗子はゆっくりと起き上がった。そのまま枕元に充電していたスマートフォンを確認する。時刻が9:00を示していたので麗子は活動を開始することにした。麗子はぐーっと背伸びをした後、ベッドから降りた。読みかけの漫画が散らかっている床を片付け麗子は部屋を出る。階段を降りて麗子は洗面所に向かった。洗面所には赤い蛇口と青い蛇口がある。麗子はうとうとしながら青い蛇口を捻る。そのまま冷たい水で顔を洗った。麗子は化粧台の横にかかっているタオルで顔を拭いた後、そのままリビングに向かう。  麗子は冷蔵庫から2Lのペットボトルに入った烏龍茶を取り出しコップに注ぐ。ごくごくと音を立ててそれを飲み終えた。はあ、と一息つくとキッチンにウインナーと目玉焼きがあることに気付いた。麗子はおかずを手に取りリビングに向かった。麗子は清美と一度もすれ違わなかったことを不思議に感じたが、すぐに二階のベランダで洗濯物を干しているのだと察した。 ゆっくりとちゃぶ台の前に腰かけておかず皿を置き、麗子はウインナーを黙々と食べ始めた。    とんとんとん、と人が降りてくる音がした後、がちゃりとドアが開いた。清美が一階に降りてきた。  「あら、麗子。起きていたのね」  少し意外そうに清美は麗子に語りかけた。  「おはよ、ご飯いただいてるよ」  「はいはい。今日の予定は?」  「雅人と昼からご飯」  麗子は目線をテレビを移しながら答えた。  「あ、そう」  少し嬉しそうに相槌を打ちながら清美はちゃぶ台の前に座った。  テレビからは情報番組が流れている。有名な女流イヤミス作家がタレントと対話しながら日常を話していた。  「あ、この作家知ってる」  麗子が指を指しながら言った。  「どんな性格悪い人かと思ったら意外とただのおばさんだね」  麗子の一言で清美であははと声を出して笑った。  「紅茶淹れてあげよっか」  麗子は立ち上がり、キッチンに向かった。  「ありがとう、気が利くね」  じゅごーとポッドからお湯が沸く音が部屋中に響く。ふつふつと湧き出る湯気が部屋の乾燥を潤していた。        
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