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無造作に紙筒を拾いあげたフェリシアンの冷たい口ぶりに、フェリサの背を悪寒がすべり落ちる。
信じがたいが信じざるを得ない。
「――フェリシアン、まさかあなた、リーヌス殿下を――処分すると――?」
主君のためなら、騎士はいかなる任務も遂行することになっている。
たとえば、主君の意に添わぬ者の処分など――。
「そういうことだ。そしてフェリサ、おまえも王子暗殺犯として処分させてもらう。王家の者は潔白でなければならんからな」
「は……?」
「この件は、身分違いの恋に迷った愚かな女騎士が起こした悲劇ということになる」
彼の部下たちが一斉に剣を抜いた。
そのことよりも、ぼんくら王子に巻きこまれた事故でしかないこの状況が、本当に駆け落ち――さらに心中として処分されるということに、フェリサは何より驚いた。
一拍置いて、猛然と腹が立ってくる。
「はあああ!?」
怒りの声とともに、フェリサは剣を抜いた。
騎士たちはやや警戒を強めた。
が、彼らの絶対優位が変わらないことは、彼らも、そしてフェリサ自身もわかっている。
傍らでリーヌスがため息をついた。
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