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「ごめん、フェリサ……。父上と兄上は、僕に見合いをさせて、婿入り先の当主の暗殺を計画していたんだ。さっきの紙筒は、その命令書。あれを持って逃げたら、暴露を恐れて軽率なことはしないかなと思ったんだけど、逆効果だったみたいだ」
親衛隊への、しかも暗殺命令書などという最高機密をどうやって盗み出したのか。
フェリサの主君のこのぼんくら王子は、まったくもって無駄な能力ばかり持っている。
大きなため息がフェリサの口からこぼれた。
「……ぼんくら王子付になって、これで安心だと思っていたのに」
地味に目立たずひっそりと生きていける堅い勤めと年金は、このぼんくら王子のせいでもはや夢と化した。
だが、こうなっては仕方がない。
まずは目の前の危機を脱しなくては、人生そのものが終わってしまう。
「特に殿下に恋したと記録に残されるなんて、死ぬよりいやです」
「ひどいよ、何もそこまで言わなくても」
「黙って。それより朝食のパンを残しておいたでしょう。とっとと両耳に詰めてください」
「は? フェリサ、食べもので遊ぶのはよくないよ」
「悪いと思ってるならさっさとやんなさい、このぼんくら王子!」
情けない顔をしつつも、リーヌスは素直に従った。
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