女騎士は第四王子のせいで頭が痛い

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「耳のパンも全部取ってあげましたし、もう何も問題はないですね。じゃあどうぞ勝手に元気にやってください。それでは」 「いやちょっと待って、フェリサ!」  リーヌスにくるりと背を向けて歩き出そうとしたフェリサは、強引に引き止められた。  不機嫌を隠さずにふりかえる。 「なんですか? 国を離れたら、あんたなんかただのぼんくらなんですが? もうこれ以上つきあう義理も情もないですよ」  リーヌスは、珍しく真剣な面持ちだった。 「ずっと考えていたんだ――船でのこと」 「ぼんくらがいくら考えても時間の無駄です。では」 「いやだからちょっと待ってって! あのとき、どうして王宮騎士たちは、僕たちを目の前にしながらみすみす逃がしたんだ?」 「奇跡でしたね」 「それにフェリサは、どうして僕の耳にパンなんか詰めさせたんだ?」 「口にも詰めてもらうべきでしたね」  質問はフェリサの返事を期待してのものではなく、自分の思考をまとめるためのものだったらしい。  リーヌスはよりいっそう考え深げに、フェリサを見やった。 「……いにしえの魔女は、美しい歌声で人びとを魅了し、惑わし、それゆえに当時の支配者に恐れられて迫害されたという……」  フェリサはあわてて、彼の手を振りはらった。
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