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「……は?」
見慣れた宿舎の部屋ではなかった。
磨かれてはいるがどこか粗くささくれた木の壁と、頭をぶつけそうに低い天井の梁。
窓もなく、天井にかけられたランプはゆっくり揺れている。
さらに、
「ああ、よかった、起きてくれて。もう息が詰まりそうなんだ。早く甲板に出よう」
おっとりと微笑む、薄暗いだけに色白が際立つ赤銅色の髪の青年。
この国の第四王子リーヌス、フェリサの主君だった。
「でっでで殿下っ!?」
なぜ、どうしてと混乱状態になりつつも、フェリサはあわててベッドからすべりおりた。
膝を伸ばした瞬間、少年のように短く切った暗褐色の髪に低い梁が触れた。
「あわてて立つと危ないよ、フェリサ。ここはひどく狭いから、油断するとすぐに頭をぶつけるんだ」
すでに何度か経験済みらしく、リーヌスは自分の頭をさすった。
「そっ、そんなことはどうでもいいんです! どこですかここは!? 何をしてるんですか!!」
「え、まさか覚えてないの? ほら昨日、港につきあってもらっただろう?」
そうだ。昨夜はリーヌスに命じられて、夜の港へのお忍びのお供をさせられた。
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